さとうや

起業家紹介 [リサイクル着物・貴金属・和装小物、買取販売 さとうや 店主 影山 雅美]

気軽に楽しめるリサイクル着物を最初のステップに。

さとうや



さとうや

「桜色は、花びらではなく、黒っぽい樹皮から」という“木”の不思議に惹かれて…。

教科書に載っていた一編の文章が、中学生だった影山雅美さんの進路を決めました。

──志村さんがなんとも美しい桜色に染まった糸で織った着物を見せてくれた。そのピンクは淡いようでいて、燃えるような強さを内に秘め、はなやかで、しかも深く落ち着いている色だった。その美しさは目と心を吸い込むように感じられた。「この色は何から取り出したんですか」「桜からです」と志村さんは答えた。素人の気安さで、私はすぐに桜の花びらを煮詰めて色を取り出したものだろうと思った。実際はこれは桜の皮から取り出した色なのだった。あの黒っぽいごつごつした桜の皮からこの美しいピンクの色が取れるのだという。志村さんは続いてこう教えてくれた。この桜色は一年中どの季節でも取れるわけではない。桜の花が咲く直前のころ、山の桜の皮をもらってきて染めると、こんな上気したような、えもいわれぬ色が取り出せるのだ、と。
(大岡信『文章の力』/中学校[国語2]光村図書出版) 志村さんとは、人間国宝(紬織の重要無形文化財保持者)の染織家、志村ふくみさんです。引用したくだりは、“文章の力”について述べるためのエピソードなのですが、影山さんの心を捉えたのは、着物でも、染色でもなく、「黒っぽいごつごつした桜の皮」から「美しいピンクの色」が生まれる“木”の不思議でした。 大学の農学部森林科学科で学んだ影山さんは、滋賀県長浜市にある住宅用2×4パネルの加工会社へ就職し、構造図設計に携わります。



さとうや

一瞬にして、アンティーク着物に魅せられて…。

──大学の農学部森林科学科を卒業して、住宅用2×4パネルの加工会社で構造図設計。着物とは全く接点がありませんね。

そうですね(笑)。木材関連の会社で営業を希望していましたが、CADオペレーターになるとは思っていませんでした(笑)。その頃、同僚が通っていた着付教室で着付けを習い始めたんです。和気あいあいとした楽しい教室でそこでも着物の楽しさを学びました。当時は会社も住まいも長浜でしたから、休みの日には、よく京都まで出掛けていました。あるとき、長浜へ戻る電車まで時間があったので、[JR京都伊勢丹]の7階にある[美術館「えき」KYOTO]で開催されていた『池田重子コレクション 日本のおしゃれ展』を本当に偶然観たんです。確か最終日だったはずです。当時の私は何も知らなかったのですが、池田重子さんは、アンティーク着物のコレクターとしても知られる着物デザイナーです。よく「雷に打たれたような」と言いますよね。そう形容したくなるようなインパクトでした。「着物には、こんな世界があるのだ!」──一瞬にして、アンティーク着物の魅力にハマった瞬間でした。それまで、着物といえば、成人式とか、結婚式とかに着る訪問着や振袖のイメージが強かったですからね。。


さとうや

リサイクル・ショップで着物部門を担当して…。

──アンティーク着物の魅力にハマって、日々の暮らしの何かが変わりましたか?

京都の骨董市の天神さんや弘法さんに休みの日が合えば必ず通ってアンティーク着物を集めていましたね。アンティーク着物を着て出掛けることも増えました。思えば、その頃から着物に関係する職に就きたいと考えていたのかもしれません。20代の後半に郡山へ戻ってきて、父が営んでいる内装工務店で事務をやりながら、漠然と呉服店へ勤めることを考えたりしていました。でも、私がやりたいのは高級な訪問着を扱うことではないような気がして、ためらっていました。そんなとき、リサイクル・ショップの着物部門の求人広告を見つけたのです。ただ、無事に採用していただけたのはよかったのですが、その頃の私は「着物が好き」という気持ちだけで着物の素材や格などについて全くの素人でした。そんな私が、《きもの文化検定・上級》を取得するまでになったのも、ショップの近くにあった呉服店のご主人や、着物に詳しいお客様方のおかげです。リサイクル・ショップには約10年勤め、その間に結婚もしました。




さとうや

[創業チャレンジショップ]への出店を思いついて…。

―独立を思い立ったのは、なぜですか?

一昨年の11月にショップを辞めたのですが、ずっと着物に関わっていたかったので、「独立」という考えが頭をよぎりました。ただ、具体的な計画があったわけではありませんし、資金も含めて、とくに準備もしていませんでした。じつは私、リサイクル・ショップに勤めている間も、実家の事務を引き受けていました。ですから、いきなり店を構えるのではなく、実家の事務をやりながら、フリー・マーケットとか骨董市への出店から始めようかと、とりあえず《古物商》の許可だけは取りました。屋号の「さとうや」は旧姓の佐藤からなんです。そんなとき、[創業チャレンジ・ショップ]への出店を思いついたのです。知人が以前出店していたこともあって、[創業チャレンジショップ]の存在は知っていました。事業計画書を作成して『郡山商工会議所』へ申し込んだのが昨年の7月末。8月の初めに面談があり、中頃出店OKの通知をいただきました。



さとうや

1年後にどうするか、あれこれ考えてはいますが…。

──[創業チャレンジショップ]は、ほかにも出店の申し込みがあったのですね?

はい。ですから、結果が出るまでドキドキで、たっぷり受験生の気分を味わいました(笑)。今は、とにかく楽しいです。自分の責任で着物を買い付け、値段を決め、陳列を考える。自分が気に入った着物を、気に入ってくださったお客様がお求めくださる──そのすべてが楽しいのです。でも、[創業チャレンジショップ]は、わずか1年後に卒業です。オープンが昨年の9月26日ですから、はや6カ月以上が過ぎています。1年後をどうするかを、そろそろ決めなければなりません。店舗を探し始めていますが、「郡山駅界隈がよい」のか、「街の中心から離れていても専用の駐車スペースが確保できるほうがよいのか」なかなか難しい問題ですよね。また、「毎日開けるほうがよい」のか、「特定の日や曜日に限定して開けるほうがよい」のかも、お客様のご意見をうかがったりしています。まだまだ暗中模索といったところですね。(笑)



さとうや

リサイクル着物を最初のステップにして…。

──日本人の着物離れが加速していると聞きます。そんな中で、リサイクル着物の役割とか可能性を、どのように考えていますか?

着物には、厳密なルールがあり、そのルールを守ることによって生まれる格調・格式は、まぎれもなく着物の魅力です。でも、それは、あくまでもフォーマルな場面でのことであって、普段着としての着物は、もっと気軽に楽しんでよいと思うのです。より多くの人が、リサイクル着物を最初のステップにして着物の魅力に触れてくださることが、呉服マーケット全体の活性化にもつながるはずです。今日の私は、現代モノの無地の着物に、男物のアンティーク長襦袢を仕立て直した帯を締めていますが、こんなカジュアル・ダウンを楽しめるのも、価格的にもお手頃で、気軽にリフォームできるリサイクル着物ならではです。そういう意味では、外国人のお客様は、先入観抜きで、ダイレクトにリサイクル着物の魅力を感じてくださると思うので、今後のインバウンド需要にも期待しています。[福島あずま球場]でオリンピックの野球やソフトボールが行われるときは、「近くのどこかで露店を出せないかな」とか思っています(笑)。



リサイクル着物
さとうや

【古物商許可】福島県公安委員会 第251300000453

〒963-8004 福島県郡山市中町10-6
郡山商工会議所駅前大通会館 1F

tel : 090-4828-1629

http://yaplog.jp/namima/


店主
影山 雅美

ページトップ